ディベートにおける効果的なプレゼン
ディベートでは、プレゼンが上手だからといって、そのこと自信がジャッジに考慮されることはありません。
したがって、一般的なプレゼンでは重要視される「アイコンタクト」や「好感のもてる姿勢」に特別な配慮をする必要は、ほとんどないと言って良いでしょう。(印象は良くなりますが、ジャッジの判決がそれによって変わることはないと考えたほうが良いでしょう)
しかし、自分の考えをジャッジに正しく伝えるためには特別な配慮が必要です。
限られた時間内で、言葉だけで自分の考えを伝達するとき、それが100%相手に伝わることはありません。
相手が理解しやすいように伝達しなければ、自分の考えを50%も伝達できないこともあるでしょう。
自分の考えがジャッジに正しく伝わらなければ、勝てる試合も落とすことになります。
このため、ディベートでは「ナンバリング」と「ラベリング」という技術が定着していますが、これだけではまだ不十分です。
以下の点に気をつけると、さらに効果的なプレゼンテーションができるでしょう。(もちろん「ナンバリング」と「ラベリング」を効果的に使いながらの話である)
  • 要点を先に言う
  • 今までの議論を要約する
  • 一定の順を追って述べる
  • 要点を最後に繰り返す
  • 時間配分を考えながら述べる
■要点を先に言う

ある程度まとまったことを述べるときには、必ず、要点を先に言うようにします。
これにより聞き手は心の準備ができ、その後の話を聞き取りやすくなります。
「要点を先に言う」ということは、よく言われていることですが、なかなか守られません。
たとえば、証拠資料を引用するときにも、まずその証拠資料で重要な情報を先に要約して述べましょう。
何のヒントもなく、早読みされる証拠資料の引用から大事なポイントを拾うのは、ジャッジにとって相当な負担です。
良い例
以上のような発生過程により、サマータイム制を導入すると、省エネになります。
XXXの試算によりますと年間XXXklもの省エネになります。証拠を引用します。
出典は.....(年間XXXklの省エネになることを示す証拠の引用)このように年間XXXklもの省エネになるのです。
悪い例
以上のような発生過程により、サマータイム制を導入すると、省エネになります。
証拠を引用します。
出典は.....(年間XXXklの省エネになることを示す証拠の引用)。
このように年間XXXklもの省エネになるのです。
■今までの議論を要約する
議論が込み入った場合、これまでの議論を要約してから反駁するほうが有効です。
これにより、これまでの議論についてジャッジと理解を統一できるからです。
これまでの議論の流れに対する認識が、ディベータとジャッジで異なっているとしたら、反駁が有効に機能しません。
例:
メリットの一番目についてのこれまでの議論をまとめます。
否定側はメリットの一番目について、第二立論で「(理由)」だからメリットは発生しないと主張しました。
これに対して肯定側は第一反駁で「(理由)」と述べました。つまり、論点は「(論点)」であるかないかにしぼられたことになります。
■一定の順を追って述べる
反駁する順は、できればメリット1,2、デメリット1,2もしくは、デメリット1,2、メリット1,2が分かりやすくて良いでしょう。
予告もなしにあっちに行ったりこっちに行ったりすると、ジャッジが混乱します。
とはいっても、集中して反駁したい論点を先に述べて、時間があればその他の論点にも触れたいと思うこともあるでしょう。
この場合には、反駁の一番最初にどの順番で反駁していくかを示し、その順に述べるようにしましょう。
■要点を最後に繰り返す
大事なポイントは、最後にもう一度述べるようにします。
これにより、ジャッジが万一聞き逃していたとしても、カバーできます。
また、大事なポイントを印象づけることもできます。特に、時間が余った場合は、各論点の大事なポイントだけを繰り返し強調しましょう。
■時間配分を考えながら述べる
前もって準備のできない反駁では時間配分が大事になります。
行き当たりばったりでは、時間がなくなって大事な論点をドロップしてしまい、致命傷になりかねません。
持ち時間を反駁する論点の数で割り、平均の時間をベースに反駁する重みづけを考慮して、目標時間を設定してから話しましょう。(目標時間を設定する時間がなければ単純に論点の数で割った時間を目安とする)
難しいと感じるかも知れませんが、意識してやれば比較的短時間に身につけられるスキルです。
時間が余ったからと言って、思いつくまま手当たり次第に論点を補足するのは感心しません。
時間が余った場合は、述べてきた順に、各論点の大事なポイントだけを要約しながら、繰り返し強調しましょう。
また、いくら時間が限られているからと言って、聞き取れないくらい早口で話してはなりません。
特に、立論はあらかじめ用意しているため、早口になりがちです。
しかし、相手側に、「早口で聞き取れない立論は立証責任を果たしていない」と反駁されたら、返しようがなくなります。
ただし、あまり重要でないところは多少早口になってもかまわないでしょう。
たとえば、証拠引用の際に、上述のように重要な情報を前もって要約しているなら、引用部分は多少早口になっても問題はないでしょう。
要約部分はゆっくり、詳細部分は多少早口がポイントです。