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ここが変だよ 日本人−悪魔の代弁人がいる議論の風景


西部直樹(N&Sラーニング代表/研修講師
悪魔の代弁人 「悪魔の代弁人」英語でdevil's advocateと言います。
悪魔の代弁人とは、(議論を面白くするために)あえて反論を唱える人 (プログレッシブ英和辞典)のことです。
議論をしていると、時として膠着状態に陥ってしまったり、水掛け論が続いてしまったりすることがあります。
もし、その場に「悪魔の代弁人」がいれば、それまでの議論とは違う視点が提示されたり、新たな基準が持ち出されたり、あるいは論理の矛盾を指摘されたりして、議論はより深まってゆきます。
「悪魔の代弁人」の機能を、討論TV番組「ここが変だよ、日本人」から見てみようと思います。
悪魔の代弁人の弁「殺人者の小説は殺人者しか書けないことになる」 ある事柄についてだけ当てはまる論理は、その特定の事柄だけを見ていると、見事に物事を説明し、説得力があるように思えます。
しかし、その説得力はその事柄だけのことで、普遍性をもたず、ただの言い訳でしかないことがあります。
悪魔の代弁人は、時に「あなたの論理で行くと、こうなりますね」と、その誤謬を指摘してきます。
「ここが変だよ、日本人」では、毎回テーマに沿って日本在住の外国人と日本人の間で議論が戦わされます。
時には、そのテーマとなっている当事者をスタジオに招いて、外国人・日本人・当事者間の三つ巴の議論も行われます。

「風俗につとめる女子大生」というテーマの回のことです。
SMクラブに勤める女子大生が、なぜそのようなところに勤めるのか、その訳をこのように説明していました。
「私は作家になりたいんで、今やっていることって絶対プラスになるじゃないですか。
うちは山田詠美さんが書いた小説とか村上龍さんが書いた小説よりも、もっと生々しいSM小説とか書いてみたいですし、それなら自分で飛び込んでM嬢も女王様もやって、はじめて自分の中で消化してから書けるものだと思いますし、そういうのって普通に学生やっていて、社会人やっていてできないじゃないですか」
この女子大生は、小説を書くためには、そのテーマに合った体験を経なければならない、と説明をしています。

この説明に対して、ビートたけしは次のように返していきます。
「でも、殺人者の小説、殺人者しか書けないことになる」
その論理を他のことに当てはめると成り立たないことで、論理の誤謬を端的に指摘しています。
論理が破綻した彼女は、その後勤めている本当の理由を正直に話していました。

あなたも「悪魔の代弁人」に 議論が暗礁に乗り上げたり、あるいは一人で考えているときに煮詰まったりしたら、「悪魔の代弁人」を呼びましょう。
ビートたけしを呼ぶことはできませんが、「悪魔の代弁人」になるのは、簡単です。
幾つかのキーワードを元に考えてみればいいのです。

例えば、
反対から考えてみたら
他のことに当てはめてみたら
なぜ、そうなるの
すると、どうなるの  ・・・etc

ただし、他の人と議論をしているときには、断りを言ってから使いましょう。
「議論を深めるために、あえて異を唱えてみます」
そうしないと、ただの「嫌な人」になってしまいます。ご注意下さい。